ハウスクリーニング

台湾文山包種製茶道中物語

〜其之壱〜

台北縣坪林郷 蘇老師の茶畑

今日から暫くは台湾道中物語を書いていく予定です。あくまで予定です。そこんところよろしく。

台湾についた当日は夜夜中もいいところでしたので、早速子爵飯店に泊まり翌日から製茶実習に向かいました。

台北縣農會文山茶推廣中心(文山包種茶を専門に扱うお店)にて今回お世話になる通訳のSさんご夫婦と合流し、いざ坪林郷へ。

そして車に揺られること数十分…待っていたのが写真の景色。
今回ご指導いただいた蘇老師のお宅からの風景です。
一面に広がるのは茶畑です…なんて素晴らしい景色なんだろうと見とれてしまいました。

さぁ、文山包種製茶の開始です!

つづきは次号!

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〜其之弐〜

茶摘ですがな

えーっと、其之弐です。

蘇老師のお宅について早々に茶摘開始です。
今回は台風の影響もあり、本来の青心種ではなく、翠玉種(台茶13号)で作るという面白い事になりました。この時点で普通でなくて最高です。
茶摘では極力葉の柔らかい新芽を摘むように指導されましたが、正直どれがOKでどれがあかんのか判断するのがめっさ大変。悩み迷いつつの茶摘。そんなわしら素人だけでは製茶に必要な量を用意するのに時間がかかるので、蘇老師をはじめプロの集団に加勢をしていただきました。
ちなみに今回お世話になった茶師の方は、白い服を着てるのが蘇老師(兄:アバウトな天才肌)、その後ろに立っているのが蘇老師(弟:真面目で几帳面しっかり者)の兄弟茶師です。この兄弟老師のコンビがまた絶妙です。仲がよく、お互いの役割をきちんと理解していて、そのコンビの仕事振りには脱帽です。

茶葉ですがな、綺麗ですわ

見てください、この日の光を受けて綺麗に光る茶葉を。
この茶葉を見たらお茶の完成がとても楽しみになりました。一所懸命やらねば!と力が入りました。一枝三葉、もしくは一枝二葉で茶葉を摘んでいくんですが、その際気をつけなければいけないのは、茎の部分を米粒一粒くらいを残して摘むようにすることです。これが美味しいお茶を作る過程でのポイントのひとつです。ちょっとしたことですが、それが後の作業に影響を与えることになるのです。そんなこんなで小一時間程で茶摘が終了です。

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〜其之参〜

茶摘が終わったんです日光萎凋です、籠に広げてます

茶摘完了。

この左の写真は摘み終わった茶葉を大きい籠中でまとめた様子です。
これだけで約18斤あります。1斤=600gなんでざっと計算して11kgぐらいですかね。わしらだけではこれだけの茶葉を摘むのに一日かかっても終わるかどうかって感じですわ。やっぱ何事にもその道のプロってすごいですわ、と改めて感銘を受けましたわ。

茶摘が終わったら次は、この一所懸命集めた茶葉を日光で乾燥させます。日光萎凋(にっこういちょう)という工程です。
長年使い込んだ結果、それ自体からお茶のよい香りがほのかにしてくるザルに極力厚さ薄め均等になるように茶葉を敷き詰めます。全部で13個になりました。
敷き詰め終わったら、そのまま待ちになります。写真を撮ろうとうろうろしていたら、蘇老師(兄)に「茶葉に影を作るように立ってはあかんよ」と怒られてしまいました。師匠のレポートで「籠のまわりに人が立っただけで…」のくだりはわしのことを指しているのでしょう…
日光萎凋を始めたら均等に水分を蒸発させるために、茶葉に余計な影ができないようにしないといけません。

しないといけないんですって!ハ、ハーイ!わかりました!(右手をあげウド鈴木風に)と心の中で反省です。

美味しいお茶を作るには、ひとつひとつの工程に細心の注意を払わねばなりません。わしの注意が足りませんでした。

この日光萎凋にかかる時間は、その日の天気と茶葉の状態と相談しながら決まるのです。このあたりの判断は老師の知恵を拝借しないと出来ません。
途中、茶葉の水分を均等に蒸発させるために、ザルの中の茶葉を決して余計な傷をつけないように優しく揉むようにかき混ぜます。
蘇老師はまるで一流シェフのフライパン捌きのようにザルを両手に持ち、ザル全体を上手くゆすって茶葉をザルの中央に集めてからかき混ぜていましたが、わしらもチャレンジするもどうにもこうにも上手くいきませんでした。何気に技自慢でもされたようでちょっと悔しい(笑)

そんなこんなで次は室内萎凋に移ります。


余談ですが、茶農家いわゆる茶師というのは30年以上の経験がないとベテランとは言われないそうです。

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〜其之四〜

これからじっくりと…美味しい文山包種茶になっていくんです

日光萎凋が終わったら次は室内萎凋です。ここからが思ったよりも正直時間かかりましたね。
ザルを棚に移してからは、時間をかけてゆっくりと。
ここからは茶葉の香りと時間と相談しながら、一つひとつの作業を行います。「この香りだ!」というタイミングを逃すととても悲しいことになってしまうのです。

攪拌作業 茶葉に余計な傷をつけないように…攪拌作業後 茶葉が少しずつ変わっていきます 蘇老師(弟)真面目にきめ細かい説明です攪拌作業後 茶葉が少しずつ変わっていきます 蘇老師(弟)見事なまでの攪拌作業 お手本です攪拌作業後 茶葉が少しずつ変わっていきます

昼夜を問わず、醗酵度合いを香りと茶葉の状態でチェックして、攪拌作業を行います。
攪拌を行うごとにザルの数がどんどん減っていき、最後には13個あったものが3個にまで減ってしまいました。
わしの拙い撮影技術ではわかりづらいかもしれませんが、攪拌を繰り返した後の茶葉は随分と水分がぬけ発酵が進みしんなりと変化してきています。

またポイント時は蘇老師(弟)がきめ細かに解説をしてくれます。ほんとに細かい説明を一所懸命にしていただきました。謝謝。

また攪拌をする前には必ず茶葉から漂ってくる香りを茶葉の中に顔を埋めるようにして確認します。室内萎凋を始めた時の香りと途中経過時点の香り、そして最後のタイミングでの茶葉の香りの変化には驚きます。

この攪拌作業がお茶の香りを左右するのです。余計な傷を茶葉につけないように優しくしかし手早く行わなければなりません。わしを含め各人が攪拌作業を行いました。そしてザルが3個になった時点で香りを確認すると3個とも違う香りでした。同じような作業をしていたはずなのに、微妙な作業の違いによってこんなにも香りに差が出るのかと、とても吃驚です。
あらためて本当に美味しい文山包種茶を作るためには、一つひとつの作業に対する細心の注意の大事さを痛感しました。

始めは茶葉とはいえ葉っぱですから強めの青々しい香りが強くとても文山包種茶のあのさわやかな香りを想像することは出来ませんが、時間が経過、攪拌を繰り返しているとじわりじわりと香りが変化していくのです。青々しい香りが抑えられてきて、だんだんと柔らかいほんのりとした…しかし力強い花の香りのように変わっていくんです。

この香りの変化を身をもって体験できたことは、ものすごく感動し「お茶を作っているんだ」という実感を持てとても嬉しかったです。

日付けも変わりようやく室内萎凋も終了です。

この室内萎凋の合間の時間には、そりゃもういろいろとあったんですが、それは後述する予定、うぷぷ。

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〜其之五〜

沢山あった茶葉も発酵後はこれだけ…殺青後の茶葉です 揉捻中!揉捻中!乾燥中!乾燥中!

室内萎凋が終わったら、ここからは一気に進みます。
茶葉の発酵を止めるために殺青を行います。釜が高温(260℃)になったら茶葉を一気に投入します。この釜は最終的には300℃くらいまでになります。
この釜に茶葉を放り込む作業は手早く!が基本にして重要。そうしないと茶葉の発酵を止めるタイミングにムラができてしまうのです。
ほんとはこの釜に茶葉を放り込んでいる瞬間の写真を撮りたかったのですが、自ら釜に茶葉を放り込んでいるために撮れませんでした。だいたい6分で殺青終了。

次は揉捻です。
殺青の終わった茶葉をこれまた一気に揉捻機に放り込みます。茶葉がどんどん揉みこまれてやっと文山包種茶になっていってるなぁと実感しました。
この殺青、揉捻の作業は蘇老師(兄)にお任せ状態で、作業時間の長さ、タイミングはプロでないとわかりません。茶葉の状態を常に細かくチェックしながら作業を行っていく様子を、それこそ穴の開くほどに見つめておりました。
揉捻完了後には乾燥に入ります。ベルトコンベアが何層にもなった乾燥機で120℃くらいの温度に設定し、その中を2回通します。
そしてその後最期の乾燥を行います。100℃に設定して1時間30分くらい乾燥させてやっとお茶の出来上がりです。
今回わしらがやったのはここまでですが、本来はここから茶葉についている茎の部分を取り除いて、茶葉の大きさごとに分類して…と本来の製茶の作業が入りますが、それをやったのではとてもじゃないですがお家に帰れなくなるので、今回はここまで。

兎にも角にも出来上がったばかりのお茶を一掴みして蘇老師に淹れていただきました。
鼻をくすぐる香り、口の中に広がる香りとさわやか旨味…自分達のお茶が出来たんだ〜と思うと感慨もひとしおです。蘇老師からは今回のお茶の出来栄えは上々との評価をいただき、嬉しさのあまりにオカシクなりながらお茶を味わっていました。

今回の文山包種茶冬茶製茶実習では、いろんな人との縁によって格別の体験をさせていただきました。
これでまた一段とのめり込んでしまいそうです。責任取ってください(笑)

本当に今回お世話になった方々には感謝感謝です。
ありがとうございました。

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〜旅情編(番外編)〜

比賽会場 台北縣坪林郷農會(日本で言う農協のような場所)比賽用の淹れ方でにお茶を淹れています 審査中!審査中!審査結果が一目瞭然なんです

やならきゃならない番外編です。
あくまで旅情編と銘打った番外編であって番外地シリーズではないですから。
そんな前フリはよいとして、製茶実習の合間に台北縣坪林郷農會(日本で言う農協のような場所)で文山包種茶の比賽(コンテスト)が開催されていたので見学させていただきました。

今回の比賽への出品数は1173点。そんなに沢山あるの!?と驚いていたら、これでも今年は少なく例年の2/3程だそうです。二度吃驚だよ…わし…
わしらが着いたときにはすでに始まっていまして審査員が厳しい顔をしてお茶のチェックをしていました。
そのチェック方法とは、

  1. 秤で茶葉を3g量り、検定用の蓋付きマグカップにいれます
  2. お湯を注ぎ5分待ちます
  3. 5分後検定用茶杯に移します
  4. スプーンをお茶にひたして、その香りをチェックします
  5. スプーンでお茶をすくい口に含み、口の中に広がる味と香りをチェックします
  6. チェックしたお茶は呑まずに自分のカップに捨てます
  7. A〜Dランクまでの評価をつける
こんな感じで、審査員は4〜7の作業を1173回繰り返すのですが、その評価のスピードに驚きます。
僅かな時間であっという間に評価していきます。蓋がひっくり返されてしまっているは、「評価外」すなわち論外な味の茶。よい評価のお茶は、茶杯とマグカップをサンプルの茶葉の近くに置くようにするのです。その置いてある位置によって一目で評価ランクがわかるようになっています。
ちなみにスーツ姿の方が責任者の李さん。どういうわけかウチの師匠が知り合いでして、本来は一般人が立ち入ってはいけないスペースまで入らせていただき写真まで撮ることが出来ました。台湾に来て思うのですが、ほんとウチの師匠は日本人かい?どうやったらこんな面白い人たちと繋がりを持てるのか?と首をかしげます。謎が多いです(笑)
あとちょっとした時間の合間に李さんのご好意により、上位評価を受けたお茶を試飲させていただきました。もちろん美味しかったですよ。感謝感謝です。

蘇老師の所属する班の比賽会場この二つが最終選考に残ったお茶です

上の2枚の写真は、お世話になった蘇老師がいる地区での比賽の風景。ここでも評価方法は一緒です。
右の写真が最終選考に残ったお茶。この二つのお茶呑みました(笑)
二つを比べると片方が明らかに旨いのがわかりますが、数多くの中からこの二つを選ぶのはわしには不可能ですわ。
ちなみに他のお茶もこっそりと茶葉自体の香りをチェックしたり、お茶の香りをチェックしたりしてました。

蜂が入った台湾の焼酎…ええ、呑みましたとも女性陣が茶葉とタロイモを使ってデザートを作っています これが何かわかるかな??茶油でさっぱりと揚げてみました

製茶作業の合間には、蘇老師の奥様の料理と特別なお酒と珍味で、わいわいとやってました。

見てわかるかな?台湾産の焼酎の中にそこいら辺で捕まえてきた蜂を漬け込んでいます。ええ、このお酒を呑むんですよ。蜂を一年漬け込んだお酒も呑みましたが、色味が少し山吹色がかっていて香りはほんのりと蜂蜜のような感じでなかなかに旨かったですよ。ちょっとわしには強かったけどね。
そして夕食後は女性陣が茶葉とタロイモを使ってデザートを作ってくれました。シンプルな味わいながらもクセになる味ですね。なんかとっても懐かしい感じで美味しかったですわ。
そして極めつけは、わしらが来るまで取るのを我慢してた(笑)という巨大な蜂の巣。
といっても蜂の巣そのものを食べるのではなく、日本でもお馴染みの蜂の子を食べるんですよ。蜂の成虫はお酒の中、蜂の子は巣から取り出してそのままも食べるし茶油(茶の実から抽出した油)でサッと炒めて食べます。

蜂の子食べたのかって?

そりゃ「郷に入れば郷に従へ」ですよ!食べましたよ、生と炒めたもの両方ともね!
生の方の感想は書きませんが(笑)炒めたほうはとても美味しく頂きましたよ。香ばしくて旨かった。
何よりもこれをわしらに食べさせようと思ってくれたという気持ちを考えると絶対に断れないよね。お酒も蜂もね。

というわけで製茶作業中にもかかわらずしこたまに呑んで食ってしまったわしであった。

蘇老師の奥様の手料理です蘇老師の奥様の手料理です 蘇老師の奥様の手料理ですデパ地下のランチです

上の写真でと左下の写真が蘇老師の奥様の手料理。台湾の家庭料理です。左上のオレンジのはパパイヤの炒め物。これが予想以上に旨いのよ〜。またその一番右下のが、なんと、鶏の足。中国では宮廷料理のひとつとしても知られる素材なんですよ、鶏の足は。知ってました?これもねぇ…コリコリとプルンって食感がまたわしの胃袋を刺激してやまない(笑)
右上のは朝食。朝のお粥が胃に優しくてたまらない…お麩の味がまたタマラン…また野菜のなんて旨いこと…嗚呼…朝からまた食ってしまう…
左下は製茶がほぼ終了した日のお昼ご飯。肉と茶葉の炒め物がね!またね!旨いのよ!肉のジューシーさと茶葉のさっぱり感が食欲を刺激しまくり!って味が伝わらんって?そんなもん教えてやらん!知りたかったら春の製茶実習にくれば味わえるさ!台湾の家庭料理マンセー!と世界の中心で叫びたい。
その隣のは台北市内のデパ地下のランチ。これだけついて日本の豚丼よりも安いのよ。それに思ったよりもマシな味。こんなところでも台湾の恐ろしさを実感したわ。

この他にも屋台のスイーツとか豚角煮ぶっかけ丼とかお茶以外にも旨いもの満載。
いやぁ、台湾から帰りたくなくなる。前回来たときもそう思った。

魔性の国台湾。ぜひみなさまも一度いらしてください。

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